2007年 3月 8日
富山労働局長
櫻 井 眞 一 殿
日本労働組合総連合会富山県連合会
会 長 草 嶋 安 治
2007 年度最低賃金行政に関する要請書
貴局には日頃の労働行政推進の取り組みに敬意を表します。
最低賃金の目的は、最低賃金法第1条に明記してあるように「事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障」することによって、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上および事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与する」ことにあります。
連合は、全ての労働者の生活の安定や労働力の質的向上、事業の公正な競争を確保するうえで、最低賃金の水準や制度のあり方と決定の仕組みについて、十分に機能しているのか、などを検証しながら、今日の経済・社会環境の変化を踏まえつつ、更に拡充・改善させることが重要だと認識しています。
今日、雇用環境は、日本経済、企業業績の復調の中で改善傾向にはあるものの、正規労働者は、全国で 3,319 万人と 10 年前の 1996 年より 481 万人減少し、非正規労働者は 1,646 万人と逆に 613 万人増加しています。このことは、一に公正な処遇が担保されないままに正規労働者から不安定雇用・低賃金の非正規型労働者への置き換えが進むなど雇用構造上の不平等が横行していることの表れと言えます。
また、戦後最長の景気拡大が続いているにもかかわらず、勤労者世帯の可処分所得は、 1998 年より下がり続け、格差の拡大と二極化、特に低所得層の増加が急進しています。そのことが 「国民のさらなる将来不安」を呼び、ひいては日本社会全体の崩壊 を招きかねないとの懸念を抱かざるを得ません。
こうした状況のもとにある今こそ、賃金の底支え機能としての最低賃金制度の果たすべき役割は一層重要性を増しており、十分な機能発揮が社会的な課題として求められています。
以上の観点から、地域別最低賃金の水準改善と産業別最低賃金の継承発展をはかるため、行政の立場からの積極的な対応をお願いすべく、以下に要請を致します。
記
1.地域別最低賃金の引き上げについて
県内の賃金面での格差の実情、パート労働者等の低廉な賃金労働者の生活実態および必要最低生計費等の動向を十分に踏まえ、地域別最低賃金審議にあたっては、引き上げ幅ではなく、「水準を重視」した適正な審議によって「地域の自主性」が発揮され、納得性の高い水準決定を目指すこと。
2 . 産業別最低賃金について
産業別最低賃金制度は、未組織労働者を含めた当該産業の団体交渉による賃金決定を補完し、賃金の社会的規制の機能をもっている。当該産業の労使による企業内最低賃金協定の締結などによる合意形成を取り組みの基礎としながら、当該産業労使の話し合い、地域における審議会での労使合意を前提とした決定を行っており、この取り組みが労使関係の安定や事業の公正競争確保の役割を果たし、賃金の底支え機能を担っている。こうした実態を十分に踏まえ、水準改善はもとより、機能の拡充をはかること。
特に、第三次産業分野における産業別最低賃金新設に向けた取り組みを行政の立場で支援すること。
3 . 監督行政の強化について
労働者の誰もが、労働の対価として、地域別最低賃金額を上回る賃金を受け取る権利が保障されている。しかし、外国人技能実習生やハイ・タク、輸送等の特定業種における最低賃金違反の事例が数多くみられる。
従って、要員の増強等、監督行政の抜本強化をはかるとともに、違反事業所の積極的な摘発等により、最低賃金制度の実効性を高めること。また、監督強化のため、必要に応じ関係諸団体との連携を一層強化し、実効性を担保すること。
以 上
2007年 3月 8日
富山労働局長
櫻 井 眞 一 殿
日本労働組合総連合会富山県連合会
会 長 草 嶋 安 治
労働行政に対する要請書
労働行政推進のためご奮闘されています貴局に対し、心より敬意を表します。
つきましては、労働行政について下記の通り要請致しますので、積極的な対応をお願い申し上げます。
記
1.雇用対策について
(1) |
雇用環境の改善に向けた諸施策については、増加し続ける非正規雇用から正規雇用への転換制度の導入も含め、県などの各自治体、関係諸団体と連携、協働し取り組むこと。 |
(2) |
若年無業者、若年不安定雇用労働者の就労意識向上に努めるとともに、職業訓練・能力開発の一層の充実を図ること。また、高齢者雇用安定法に基づき、希望する誰もが65歳まで働き続けられるよう、企業における「普遍的な制度」とするよう指導すること。 |
(3) |
障害者の法定雇用率 1.8 %以上を達成するよう違反企業に対する指導強化とともに、達成企業についても更なる雇用環境整備を促すこと。 |
2.労働法制について
(1) |
現在、労働政策審議会で議論されている労働契約法については、就業規則による労働条件の変更など労働基準法違反を助長しかねない内容も盛り込まれていることから、働く側の立場を尊重し、 抜本的に見直すこと。 |
(2) |
労働基準法、とりわけ労働時間法制で導入が検討されつつある「日本版ホワイトカラーイグゼンプション制度」については、長時間労働や賃金不払い残業を助長し、過労死や過労自殺のさらなる増加が危惧される。したがって、このような制度は、導入しないこと。 |
(3) |
時間外割増率についても国際的には低水準にあることから、現行25%から一律50%へと引き上げるよう見直すこと。 |
(4) |
パート労働法の改正にあたっては、すべてのパートタイマー労働者を対象とした均等待遇についての法制化を基本とすること。 |
(5) |
雇用保険法については、現行4分の1の国庫負担という枠組みを堅持されること。 |
(6) |
産業別最低賃金制度は、その存続を前提に、さらに制度の拡充を図るとともに、地域別最低賃金は、実効ある機能と水準の確保を担保すること。 |
(7) |
雇用対策法は、若者、女性、高齢者、障害者を対象に加えることについては、実効ある雇用対策のとして必要であり、早急に整備すること。 |
3.労働時間短縮について
(1) |
賃金不払い残業については、一部企業における「悪しき企業風土」として、日常的に看過されている側面もあり、当局からの監督、指導の強化とともに違反企業の公表を行うこと。また、時間外労働が適正に処理されるよう使用者に対して厚生労働省通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」の周知と基準監督行政の強化をはかること。 |
(2) |
労働者の仕事と生活の調和=ワーク・ライフ・バランスを図るため、年間総実労働時間1,800時間の達成に向け、 長時間労働削減・ 年次有給休暇完全取得に向け指導を強化すること。 |
4.男女平等対策について
(1) |
次世代育成支援対策推進法の実効性確保のため、 300 人以下の事業所においての実施計画策定をさらに促進すること。 |
(2) |
雇用における男女双方に対する差別禁止・平等を確保するため、 2007 年 4 月に施行される「改正男女雇 用機会均等法」の周知と遵守を図ること。 |
5. 監督行政の強化と労働相談対策について
(1) |
働きながら職場での悩みや不満・疑問の相談に応えるため、休日や所定時間外であっても気軽に相談できる場所の確保や体制の充実をはかること。 |
(2) |
連合富山に寄せられる労働相談でも不法な条件の押し付け、一方的な条件変更、パワー・ハラスメントなど、労働者を軽視する事例の増加が顕著であることから労働関係法令遵守へ向けた指導の強化・徹底をはかること。 |
6.労働安全衛生について
2006 年度(平成 18 年度)の労働災害の発生状況については、休業4日以上の災害件数 が1,328件 ( 昨年1,366件 ) 、死亡事故は、23件 ( 同19件 ) と休業災害は、若干の減少となっているが、死亡事故災害件数は増加している。
労働災害の発生件数がここ数年高止まりしていることから、労働災害の未然防止に向けた監督・指導をさらに強化 すること。
7. 最低工賃の改正について
1982年7月の中央家内労働審議会および、婦発第39号通達を踏まえ、最低工賃の改正を適宜行う とともに、 県内の家内労働の実情に即した最低工賃のあり方についてさらに検討すること
以上 |