■連合富山2006春季生活闘争方針
第1章 とりまく情勢と課題  第2章 基本的な枠組み  第3章 具体的な課題  第4章 闘いの進め方
日本経済は、踊り場を抜け景気の回復が鮮明となる一方、家計部門は痛んだまま取り残されている。その中で、「二極化」が進行し、格差社会への道をたどっている。2005年度の実質成長率は2%台、企業業績も4年連続で改善が見込まれている。労働者側への配分は十分可能である。また、雇用環境は緩やかながら改善傾向にあり、失業率は4%台半ばで推移しているが、有効求人倍率や企業の新規採用状況は明らかに改善してきている。しかし、労働者を狙い撃ちにした社会保険料の引き上げや定率減税の縮減、医療費など負担増を考慮すると、積極的な賃金改善をしないと、個人消費の低迷によって景気が失速しかねない状況にある。
連合は、「マクロ的には労働者に1%以上の成果配分がなされるべき」との認識のもと、「生活防衛から生活向上へ」「下支えから底上げへ」と攻めに転じる春闘を展開することを決定し、すべての組合は、報酬体系の根幹である月例賃金の改善を最優先して、賃金カーブ維持分を確保した上で、ベースアップや時給引き上げ、賃金カーブの是正、低賃金層の底上げ等の「賃金改善」・「二極化」の改善に取り組まなければならない。
また、未組織を含む全雇用労働者を視野に入れ、特に中小やパート等労働者など、所得が低い層を重視し、全体の底上げをはかる必要がある。
 日本経団連は、「横並びベースアップではなく、自社の支払能力に応じて個別労使で協議すべきである」「国際競争力を念頭において従業員の処遇・労働条件を考える必要がある」などを示したが、労働者の可処分所得の低下や将来不安、二極化など、直面する深刻な問題を克服していこうとする姿勢が弱い。また、「従業員の頑張りが日本経済をよみがえらせた」として、従業員を大切にする経営の重要性にも触れているが、実態は多くの職場、多くの家計が依然厳しい状況が続いている。
私達は、社会的な公正配分やルールづくりに積極的な役割を果たしていかなければならない。
政治情勢は、昨年の衆議院選挙において自民党の圧勝を受け、政府はより強行にサラリーマンを狙い撃ちにした定率減税廃止・医療費など自己負担が増えるなど国民に痛みを押し付け、生活不安・将来不安などの生活危機に追い討ちをかけている。
このような状況から、私達は労働を中心とした福祉型社会をめざす為にも、@成果配分と所得増 A均等待遇 B増税阻止 C働き方の改善と不安の解消をめざし、労働者全体の生活向上に向け取り組むと共に、積極的な賃金の底上げと格差是正等を実現しなければならない。中でも、しわ寄せが集中している中小組合やパート労働者等への公正配分の実現に取り組まなければならない。
 この2006春季生活闘争を生活の向上、賃金底上げの再出発として位置づけ、連合富山に結集するすべての組織・組合員が積極果敢に行動を展開し、要求実現をめざす。


第1章 とりまく情勢と課題
1. 安定成長には企業部門から家計部門への所得配分が不可欠
2. 雇用形態間、規模間などの所得格差拡大に対抗する運動の強化が必要
3.人口減少社会をみすえ、働き方の改善が必要
富山県における経済は、
@設備投資2005年度は全産業で前年度比15.1%増と、2年連続増加した。製造業は35.6%と3年連続の増加となる。業種別に見て医薬品の工場増設や受託生産対応の一段落する化学などが減少するものの、事務用機器関連で工場新設のある一般機械、工場増設のある金属製品、印刷施設整備などのあるその他製造業などが大幅増となる。非製造業は9.5%と減少に転じる。
A雇用情勢は、有効求人倍率は10月1.09倍、11月1.11倍と18ヶ月連続1倍台で推移している。求人の内分けから見て、新規求人者は前年同月より0.1%増加、前年11月比で一般求人が1.5%増加、パート求人で0.3%の増加となり、全体に占めるパート求人の割合は36.7%で、前年同月より0.3ポイント減少した。
第2章 基本的な枠組み
1.マクロの配分のあり方と春季生活闘争の役割
1)春季生活闘争の役割のひとつは、生活の維持・向上をめざし、社会的な配分のあり方に関与することである。「マクロ的には労働側に1%以上の成果配分がなされるべき」との認識の元、2006春季生活闘争を組織する。未組織を含む全雇用労働者を視野に入れ、特に中小やパート等労働者など、所得が低い層を重視し全体の底上げをはかる。
2)生活の質を向上させるためには労働時間の課題も重要である。不払い残業撲滅は当然として、総労働時間短縮に向けた取り組みも強める。
2.基本スタンスと枠組み
1)デフレ経済から脱却し、労働を中心とする福祉型社会への展望をきりひらくために、@成果配分と所得増 A均等待遇 B増税阻止 C働き方の改善と不安の解消を大きな柱として、労働者全体の生活向上をめざしていく。
2)政策制度と通年的な取り組み、時限共闘の課題を明確にするとともに、連合と構成組織の役割分担を踏まえ、@連合はマクロの視点に立った基本的な考え方を社会的メッセージとして発信し、具体的要求基準は構成組織が責任をもって設定する。A構成組織・地方連合会は、連携して中小・地場組合の交渉を支援し、共闘の相乗効果を高める。
<すべての組合が取り組む課題(ミニマム運動課題)>
@「賃金カーブ維持分」を確保したうえで「賃金改善」に取り組む
A規模間や男女間の格差是正、均等待遇の実現に向け継続的に取り組む
B全従業員対象の企業内最低賃金を協定化する
C労働時間管理の協定化と長時間労働の削減に向けて取り組む
3.賃金の相場形成・波及メカニズムの構築
1)連合は、個別賃金の絶対水準を重視した相場形成と波及メカニズムの構築をめざしていく。
2)その一つとして、すべての労働者が、最低限、単身で生活できる賃金水準を上回ることができるよう、連合リビングウェイジや最低賃金の運動を強化する。
3)各組合が自らの賃金実態を調査し、各種労働条件調査などを通じ、個別賃金水準のデータの情報開示を行う必要がある。定昇込み一人平均賃上げ方式による賃金改定であっても、自らの賃金の社会的地位を確認し要求・交渉を行う。
4)交渉結果は、賃金改善分等も集約し、情報開示をさらに進める。
第3章 具体的な課題
1.政策・制度の要求と実現に向けた取り組み
1)基本的な考え方
「社会保障制度」をはじめとする各種抜本改革がいっこうに進展しないことを背景とする国民の将来不安を解消するとともに、公正な社会の実現をめざす。
2)重点政策課題
@サラリーマン大増税阻止
A社会保障制度の一体的改革の実現
B子育て支援の拡充
Cパート労働者均等待遇法制化と男女雇用平等法制定
D労働基本権の確立と民主的で透明な公務員制度改革の実現
2.賃金の課題
1)基本的な考え方
@カーブ維持分を確保した上で、ベースアップや時給引き上げ、賃金カーブの是正、低賃金層の底上げ等によって、積極的な「賃金改善」に取り組む。
  
*「賃金改善」とは基本的賃金の原資拡大を意味する。

A月例賃金の改善を最優先し、年間収入の維持・向上をめざす。
<賃金改善の参考目標値>
・35歳勤続17年労働者 所定内賃金 310,000円以上
・30歳勤続12年労働者 所定内賃金 266,000円以上 
・18歳初任給     161,000円以上

2)中小・地場組合の賃金改善
@単組、は自らの賃金実態を把握し、賃金カーブ維持分を確保する。さらに、社会水準や生計費等の比較、時系列での分析などを行い、賃金改善に取り組む。また、地域ミニマム運動への参加と活用をはかる。
A中小地場共闘を通じて取り組みを支援する。
B中小組合の要求目安
○格差是正のための水準目標値 
・35歳所定内賃金 233,000円以上
○上げ幅の目安賃金カーブの算定が可能な組合
・「賃金カーブの確保」とカーブ維持分の
労使確認+賃金改善分2,000円以上
○賃金カーブの算定が困難な組合の場合
・賃金カーブの確保相当分4,500円(目安)          
+賃金改善分2,000円以上
・定昇込み  6,500円以上
○環境が整っている組合の格差是正要求は
「環境是正分として、上記に上乗せする」
3)男女間の労働条件格差の是正
4)一時金の取り組み

3.パート労働者等の待遇改善
1)パートの組織化を全力で進めるとともに、「パート共闘会議」を立ち上げ、雇用形態間の格差拡大の流れに歯止めをかけ、均等待遇実現への取り組みを進める。パート共闘会議は各産別がエントリーし連合本部が集約する。相互に情報交換や支援活動を行い、連合として逐次発信する。連合富山は、パート集会を開催しパート労働者・有期契約労働者などの均等待遇や格差是正に向けた取り組みを行う。
<具体的な目安>(パート共闘会議で検討)
・時間あたり賃金の目標値(目安)
・・・○○円以上(または、別の表示)
・有給休暇の付与日数(目安)
・・・一般労働者の所定労働日数との比例
・一時金(目安)
・・・夏・冬 各1ヵ月以上
2)同じ職場で働くパート・有期契約・派遣・請負等労働者の待遇改善(休暇制度や一時金支給など)のために、単組は、未組織やパート等のすべての労働者を意識した交渉を進める。
3)派遣労働者や業務請負を活用する場合、必ず労使協議を行い、法令遵守を徹底する。また、派遣・請負元の企業に違法行為などがある場合、CSRの観点から経営者に姿勢を正し、公正な労働条件や働く場の確保を求める。
4.最低賃金の課題
1)企業内最低賃金の取り組み
すべての組合で企業内最賃の協定化とその引き上げを行い、法廷最賃引き上げに結びつける。
・全従業員対象の企業内最賃の目標水準
時間額840円以上
2)法定最低賃金の課題
@最低賃金対策会議・全国会議の開催を受け、最賃部会の動きに対応し、地域別最低賃金の機能強化を推進する。尚、産別最賃の見直しが検討されており、最低賃金部会の動向を注視し、対応していく。
A組織労働者の賃金改定結果を踏まえ、法定最賃の引き上げを行う。
5.労働時間、働き方、ワークルール確立の課題
法令や労働協約を守り、現状の働き方を改善する取り組みを通じて、働く側の選択肢が保障され仕事と生活の調和がはかれる公正な働き方の実現をめざす。
1)ワークルールの確立
2)雇用の安定と確保
3)労働時間管理の徹底と不払い残業撲滅
4)総実労働時間1800時間の実現
5)仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)
6)男女平等の働き方の実現
6.取引関係の改善と公契約に関わる運動
1)取引関係の改善
2)公契約における構成労働条件確保の運動
4章 闘いの進め方
T.闘争機関設置と闘争体制の整備
1.中小・地場共闘の強化について
1)闘争機関の設置と機能
連合富山、地域協議会、構成組織、産業別部門連絡会の連携などにより重層的な組織構造を生かし、労働組合全体としての連合の共闘体制の構築をはかる。
2)闘争本部の設置
第3回執行委員会から闘争委員会に切り替え闘争方針の企画・立案を行い1月24日の第29回地方委員会で2006春季生活闘争方針決定し、草嶋会長を本部長とする闘争本部を 設置し闘争体制を確立し、闘いを進める。また、4地域協議会においても「地協闘争本部」を設置し、地域に見える運動を展開し、支援オルグなどの取り組みを推し進める。
3)中小共闘センター設置
(12構成組織51,028名、構成人員の75.03%)
闘争委員会の元に中小・地場組合の共闘強化をはかる「中小共闘センター」を設置し、連合富山、地域協議会が一体となった運動展開を強める。具体的には、賃金水準向上の格差是正や均等待遇の実現をめざしミニマム運動を展開するとともに、妥結基準設定(3月末日)や妥結ミニマム設定(4月中旬)などに取り組み、パート労働者など未加盟、未組織労働者への波及にも取り組む。
U.要求提出から妥結に至る共闘体制の強化
1.前段交渉の強化
@各単組は、1〜2月を中心として職場点検活動(雇用・労働時間・安全衛生・非典型労働のワークルール・男女平等)を実施する
A各組合は、企業の経営実態、経営方針、雇用問題、賃金のあり方、格差の実態、労働時間管理の実態などの労使協議の徹底をはかる。
B自らの賃金実態に基づき、賃金カーブ維持分の算定に努め、妥結前段での労使確認をめざす。
C各地協の討論集会で学習会を開催し、定率減税による家庭への影響や不払い残業撲滅など労働時間管理についての取り組みと連動し、社会的キャンペーンを展開する。
D要求書は、原則として2月末まで提出し、遅くとも3月末まで提出する。また、前段交渉を強化する。
E構成組織・単組は賃金カーブ維持分の情報公開を行う。また、部門連絡会等の場を活用し、必要な情報交換を行う。
F回答・妥結は原則として3月内、遅くとも4月内決着をめざした交渉を展開する。
G連合富山は、県経営者協会、県中小企業団体中央会、県商工会議所連合会、県商工会連合会、富山労働局・労働基準監督署等に対し要請行動を展開する。
2.効果的な相場波及の取り組み
1)中小共闘は、自主交渉を促進し、早期解決をめざす。
2)中小・未組織・地域社会に向け、主要組合の平均的・標準的な賃金カーブ維持分・定期昇給相当分や賃金改善分を公開する。各組合は協力して情報の開示に努める。
3)産業別部門連絡会等でその相互理解をはかる。
3.官公労働者の取り組みについて
公務員制度改革については、公務員基本権の回復がなされないまま「給与構造の基本的見直し」や「人事院・人事委員勧告のあり方の見直し」だけが強行される恐れがある。公務員制度等改革対策本部を中心に公労協と連携し、公務員制度改革関連法案や地域給与の検討などに、必要な取り組みを行う。
4.政策制度要求実現の取り組みについて
連合富山として、下記の要求実現に向け取り組みを進める。(05年10月24日に8課題51項目を要求書提出、2月20日に回答)
 1)雇用創出・労働移動と公正労働基準確保に向けた施策の運営
 2)男女平等・仕事と家庭の両立支援への環境整備
 3)地域社会の活性化と地域産業及び持続可能な農林水産業の育成
 4)少子・高齢社会に対応した高度な福祉社会の実現
 5)個性の尊重、ゆとりある地域社会への改革
 6)循環型社会構築に向けた「環境対策」の強化・推進
 7)環境にやさしく、人にやさしい交通基盤の整備拡充
 8)県民益を重視した行財政運営へのシフト
V.地場共闘の強化
1)中小・地場組合の集中回答日の設定については、先行組合回答集中時期(3月15日〜18日)に引き続き、賃金制度未整備組合や中小・地場組合の集中回答ゾーン(3月20日〜31日)を設定、3月内解決組合に向けた賃上げ相場の形成とその波及をはかる。また、4月3〜8日を第1次解決促進ゾーンとし4月17〜22日を第2次解決促進ゾーンと
して設定するなど共闘体制の強化をはかる。
2)地場で交渉する組合相互の情報交換をさらに強化すると共に、地場組合集計及び連合からのエントリー集計を通じた相場形成と相場波及の取組みを強化し解決の早期化をめざす。また、エントリー構成組織からの情報を収集し妥結基準・妥結ミニマム基準に生かして行く。
3)地域ミニマムの設定に向け、賃金実態調査への参加組合をさらに拡大すると共に、効果的な活用方法についてさらに工夫をはかっていく。
4)各地協において3月6日の週を中心に「2006春季生活闘争総決起集会」を開催し、共闘体制の確立をはかる。
5)組合のない職場の労働条件向上と組織拡大
@新聞・ラジオなどマスコミ媒体の積極的な活用
A「なんでも労働相談ダイヤル」を実施する。(2月4日〜5日)
B春季生活闘争のアピールを強め、最低賃金闘争、減税(学習会還付申告運動、社会保障改革の取り組みなどと組織拡大に連動させる。
6)解決促進対策
未解決組合への解決促進支援行動(含む解決支援オルグ)の実施(4月上・中旬)
W 大衆行動
1)闘争開始宣言集会、総決起集会などの開催のほか、サラリーマン大増税阻止キャンペーン、医療・医療保険制度改革、パート労働者の均等待遇法制化、男女雇用平等法制定などの実現に向け、効果的な大衆行動を展開する。
2)行動の配置に当たっては、その目的や狙い・意義などを明確にし、社会的アピールと参加者自身の意思統一を重視した行動配置に勤める。
X 当面の日程
2月 8日 2006春季生活闘争開始宣言集会
2月10日 構成組織事務局長・書記長会議
2月16日 第1回中小共闘センター
2月18日 青年委員会2006春闘学習会
2月21日 三役会議、第2回闘争委員会
(第4回執行委員会)
2月22日 北陸ブロック代表者会議(富山)
2月 末日 要求書提出最終日
3月 1日 富山県経営者協会要請行動
3月 6日 国際女性デー集会(中央)
3月 上旬 税務署要請(4税務署)
県中小企業団体連合会 県商工会議所連合会
県商工会連合会要請行動 富山、高岡、魚津、砺波
各労働基準監督署(各地協) 市商工会議所(各地協)要請行動
3月 7日 高岡地協2006春季生活闘争総決起集会
3月 8日 富山地協2006春季生活闘争総決起集会
      砺波地協2006春季生活闘争総決起集会
3月 9日 新川地協2006春季生活闘争総決起集会
3月15〜18日 先行組合  回答引出しゾーン
3月20〜31日 中小・地場組合集中回答ゾーン
3月23日 三役会議・第3回闘争委員会
(第5回執行委員会)
3月31日 「中小共闘 情勢報告交流会」(本部開催)

*「支援集会」は連合富山の中小共闘センターで協議する。